顔の湿疹が治らない
治りにくい顔の湿疹について
皮膚の「かさつき」が気になるときに知っておきたい大切なこと
かさかさした肌は、皮膚のバリア機能が著しく低下した状態です。顔の湿疹がなかなか治らず受診される患者さんからは、「しっかり保湿しているのに良くならない」という声をよく聞きます。これは、保湿だけでは回復できないほど、バリア機能が損なわれていることが原因です。
では、「皮膚のバリア機能」とは何でしょうか?
[皮膚のバリア機能とは]
私たちの皮膚は、外界に直接触れる臓器として、刺激や異物から体を守る重要な役割を果たしています。特に皮膚の一番外側にある「角質層」は、角質細胞とその間を埋める細胞間脂質(主にセラミド)によって、外部の刺激や異物から肌を守る強固なバリア構造を作り、外敵の侵入を防ぐ物理的な防壁として働きます。これが皮膚のバリア機能です。
[バリア機能を低下させる原因とは?]
バリア機能の低下には、「外的要因」と「内的要因」が関係しています。
【外的要因】
• 過剰な洗浄や摩擦
→ 乾燥した肌にとって、これまでの洗い方は刺激が強すぎることがあります。洗顔料はよく泡立て、泡を転がすように優しく洗いましょう。ナイロンタオルやスクラブの使用は避けてください。
• 乾燥した環境(冬の乾燥、エアコンなど)
→ 空気の乾燥により水分が蒸発し、角質層が乱れやすくなります。
• 紫外線(UV)
→ 紫外線は角質細胞を傷つけ、バリア構造を破壊します。
• 刺激の強い化粧品や洗剤
→ 健康な肌では問題なかった化粧品も、バリア機能が低下した状態では刺激になります。特に、アルコール類を含む化粧水や界面活性剤を使った乳液などは要注意です。
【内的要因】
• 加齢
→ 皮脂やセラミドの分泌が減少し、乾燥しやすくなります。
• ホルモンバランスの変化(思春期・妊娠・更年期など)
→ 肌の保湿や再生のリズムが乱れやすくなります。
• 栄養不足
→ ビタミン・脂肪酸・たんぱく質・亜鉛などが不足すると、肌の修復力が低下します。
• 睡眠不足・慢性的なストレス
→ 自律神経や免疫のバランスが崩れ、肌トラブルの回復を妨げます。
[バリア機能が低下するとどうなる?]
皮膚のバリア機能が弱まると、以下のような症状が出やすくなります。
• 肌の乾燥・つっぱり感
• かゆみ・赤み
• アトピー性皮膚炎や接触皮膚炎の悪化
• 化粧品がしみる
[バリア機能を回復させるために大切なこと]
特に女性に多い「顔のかさつき」や「かぶれ」に対して、次のような対策が効果的です。
◯ 洗顔はとにかく優しく
洗顔料がしみるようなら、ぬるま湯でのすすぎだけでも構いません。泡の力で汚れを落とし、手が肌に触れないように注意しましょう。絶対にこすらないでください。
◯ 化粧品の使用は最低2週間中止を
洗顔後は、当院で処方するお薬のみを使用してください。どうしても化粧が必要な場合は、薬を薄く塗った後にパウダーファンデーションを乗せましょう。帰宅後のクレンジング・洗顔は、肌を傷つけないようごく軽く行ってください。
◯ 生活習慣の見直しも重要です
十分な睡眠、バランスの取れた食事、ストレスの軽減なども肌の回復には欠かせません。
※治りにくい湿疹の原因として、化粧品に含まれる香料などによるアレルギー性の接触性皮膚炎が隠れている場合があります。心当たりのある製品があれば、受診時にお知らせください。
※当院では、化粧品を使用した「パッチテスト」によるアレルギー検査も行っています。お気軽にご相談ください。